日本腰痛学会日本腰痛学会

メニュー

医療者におけるストレス・運動習慣と腰痛 後ろ向き・前向き研究Research-2

1.研究代表者 平井 高志
2.研究課題 医療者におけるストレス・運動習慣と腰痛 後ろ向き・前向き研究
3.研究の目的と背景

 腰痛は罹患者が最も多い職業性疾患の一つであり、特に医療提供者や介護職員に発生することが多い。また医療者は臨床現場において肉体的ストレスのみならず心理的ストレスがかかり、腰痛が悪化し休職や就労制限が出ることも少なくない。現在のところ、看護師や手術室スタッフといった限定された医療者群における腰痛の特徴や対策について議論されてきたが、1つの病院の中で職種、年齢層、属性等によって腰痛が発生しやすいかどうかを検討した研究は無い。そこで、大規模基幹病院および小規模病院のそれぞれ2つの病院においてストレスチェックの結果を用いて腰痛が発生しやすい集団分析とストレスチェックの縦断的観察により腰痛とストレスの関係を後ろ向きに調査する。また前向き研究としては被検者立脚型評価アンケートを用いて、腰痛の頻度/程度と運動習慣について調査し、医療者にどの程度の運動習慣が適切であるかを明らかにしていく。

4.研究の社会的意義(患者視点)

 現在までに医療機関において腰痛とストレスに関する悉皆性の高い調査は世界規模でも前例がなく、初の報告となる見込みである。後ろ向き研究によって医療者中の集団分析において腰痛・ストレスが発生しやすいか抽出が可能である。前向き研究においては、運動習慣および運動経験と照らし合わせ職場でのストレスや体の痛みの有訴率を評価する。以上2点において医療者の職業性腰痛の議論に資するものと考えている。

5.本研究が今後の診療にどのように役立つか

 後ろ向き研究においてはストレスを感じやすい集団、またストレスに加えて腰痛を訴えやすい属性が明らかになる。したがって、これらの集団に対して業務環境改善やメンタルサポートを前もって管理者側から提供することができる。また大規模病院と小規模病院において、ストレスの程度や腰痛の発症頻度の差異が明らかになり、それぞれの病院によって対策を講じることが可能となる。

 また前向き研究では腰痛でストレスを抱え込みやすい集団に対してどの程度運動習慣によって改善の可能性が期待できるか、また運動習慣の継続性が医療者の心理的安定性をどの程度関連しているかがわかり、医療者の職業性腰痛を考える上で新たなベンチマークを提供できる可能性がある。