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腰椎の仕組みと動きstructure

 脊骨(脊椎)は頚椎から始まり,胸椎,腰椎, 仙椎の順に下って尾椎に終わります.ヒトは二本足歩行をするようになったため,骨盤の傾きをうまく代償するように脊椎が緩やかにS字状のカーブを描き,脊椎の中で腰椎は大きな5つの椎体からなっています.この部位は体重を支える箇所でもあり,一番大きな衝撃がかかってきます.これらを支えるのが主に椎体と椎間板というクッションです.椎体は外側が強い皮質骨で卵の殻のようになっており,中は蛛の巣状の海綿骨からなります.一方椎間板はバームクーヘンのような弾力性のある年輪状の構造物と中にゼリー状の髄核が入っており,これらの変性や障害が腰痛の発生に大きく関与しています.腰痛はヒトに生まれた宿命であり,大部分のヒトが経験します.そのため,充分に腰椎の仕組みと病気を理解してうまく付き合っていくことが大切です.脊椎は脳から続く脊髄や馬尾など大事な神経を守っています.この部分は可動性があり,そのおかげで体を前後や左右に曲げたり,捻ったりすることが可能となります.病気になりやすいのは第3腰椎から仙椎にかけてですが,その理由はこの部分は大きなカーブを描いており,一番衝撃を受けやすいからです.また第11胸椎から第1腰椎にかけてはS字の中間点にあり,ここも衝撃を受けやすいといわれており,骨粗鬆症に伴う圧迫骨折は多くの場合ここに発生します.

 また,腰椎の中には脊柱管という空間があり馬尾神経や神経根という神経が通っています.一つ一つの腰椎の孔から出て,一部は坐骨神経となって足先まで到達します.これらの神経は下肢を動かしたり(運動神経),感覚を脳に伝えたり(感覚神経),排尿や排便をつかさどる神経に分けられます.したがって腰椎に障害があると腰痛にもなりますが,下肢の痛み・痺れ,麻痺, 排尿障害等が出てきます.またどの神経根が障害されているかにより,症状が異なります.例えば,一番症状を起こしやすい第5腰椎の孔から出る神経根が障害された場合,腰殿部の痛み(坐骨神経痛),膝下外側の痛み,足関節や母趾の筋力低下などが生じます.腰が痛い=腰椎椎間板ヘルニアではないかと多くの方からよくお聞きします。しかし, 一般に腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症は神経を圧迫する病気なので腰痛よりはむしろ下肢痛や下肢の痺れをきたすことが多い点に注意しましょう.これらの脊椎の周りには腹筋や背筋などの筋肉があり,加齢により筋肉が衰えてくると腰痛の原因になります.

 腰痛の原因は多岐にわたりますが、その中には消化器や腎臓などの内科的疾患や、産婦人科の問題も含まれます。また、大動脈瘤などの血管の障害も腰痛の原因となることがあります。これらの状況では、時には緊急の医療介入が必要となることもあるため、腰痛を単なる筋肉疲労や運動不足が原因だと見過ごさず、必要に応じて適切な診断を受け、注意深く対処することが重要です。