腰痛の原因が椎間板障害であると判明している場合は脊椎固定術が疼痛の軽減に有用となる可能性がある.しかしながら,手術適応は厳密に検討する必要がある.慢性腰痛に対する脊椎固定術の疼痛軽減効果は認知行動療法や運動療法などの非手術治療と同様である.
腰痛評価にODIが用いられていたメタアナリシスの結果,脊椎固定術群も非手術群も治療後にはいずれもODIは減少し,有意差はなかった74-76.脊椎固定術の優位性が示されているRCTもあり,その対象患者は,椎間板造影で疼痛が誘発され,麻酔薬による椎間板ブロックで疼痛の消失が得られた症例のみで,厳密な適応基準が設けられていた77,78.したがって,腰痛の病態が椎間板障害と判明しているなら脊椎固定術もその疼痛軽減のち療法として考慮されてよい可能性がある.慢性腰痛患者に対し2年間の追跡調査を行った多施設RCTでは,societal total cost(費やされた医療費 + 生産消失に関わる費用)は手術群で高かった.一方で,治療効果は手術群の方が有意に高かった79.すなわち,コストはかかるが治療効果も高いのが手術群であるという結論であった.また,集中的なリハビリテーションの方が脊椎固定術よりも費用対効果が優れているというRCTもあるが,リハビリテーションに割り当てられた群では約22%が期間中に手術を必要としていた80.疼痛軽減効果が同等であるとするなら手術群でコストが高いのは明白であるので,脊椎固定術は認知行動療法や運動療法などの非手術治療に比べ費用対効果に劣る.